藤井聡太四段の活躍で盛りあがっている将棋界ですが、日本全体が見習わなければいけないと感じたのは、対局後その場で対戦相手と行われる<感想戦>です。
 負けた棋士には大変辛いことだと思われますが、これをしないと強くなりません。どの手を指したから負けたのか、どう指せば最善だったのかを延々とやるわけです。
おそらくあらゆる職業のなかで、棋士ほど自分の失敗を見つめ、その原因を突き詰めることで強くなる人はいないでしょう。

 日常生活のなかで失敗したり、うまくいかないことがあったりするとその経験を無かったこととしたい、あるいは振り返りたくないとの心理がどうしても働きます。
 しかし、失敗したらその過程を遡って、なぜ失敗したかの原因をつきとめ、それを改善する方向にもっていくべきです。
 
 個人の場合は心掛けの問題で比較的簡単ですが、団体の場合は、私も経験がありますが、自己反省はなかなか難しいものがあります。私の経験した例を挙げてみます。

 15年位前、私の関係するNPO法人(名称:トライアル・自転車専用道路建設促進の為、豊島区と板橋区の有志で設立。)でイベントを開催し、大赤字を出したことがありました。
その時は板橋区の方が理事長。しっかり原因を究明し、責任の所在を明らかにすべきだと主張しましたが、うやむやのまま終わってしまったため、豊島区側の会員は退会しました。今やこの団体は見る影もありません。

 また10年近く前、当社の所属する業界団体である宅地建物取引業協会・豊島区支部で、前支部長(当時)の使い込みが発覚しました。
理事会の場で明らかにされたのですが、私は会員全てに公表すべきであると考え、その旨の意見を述べましたが、いつまで経っても公表されないため、当社のホームページで事実関係のみを発表しました。公のお金を預かっているという感覚がなく、身内を庇い合い臭い物に蓋をする、という体質が感じられました。
 結局、使い込み金は弁済されたものの、当人は除名処分にもならず自主退会でお茶を濁し、また、当時の役員の責任追及もされることはありませんでしたし、再発防止に関する議論もありませんでした。このような責任を究明しない体質は組織に後遺症を残し、後日、使い込みをした支部長から引き継ぎを受けた支部長(当然責任を感じるべき人の一人。)はその後、50万円程度の金額ではありますが、使途不明金の問題を起こしました。

 この度の都議選についても、自民党も民進党も敗戦についての<感想戦>を行えば面白いのではないでしょうか。民進党は体質の問題もありますのでさておき、自民党は個別に、「あの発言が・・・」「あの態度が・・・」「決断が遅かったのでは・・・」等々、戦術的誤りが多々指摘されるのではないでしょうか。

 将棋・選挙などは勝ち負けがはっきりしますが、なかなか負けを認めないことも多くあります。例えば、日銀。ゴールを次々に変え、政策の失敗を認めません。これを側面から応援するため、現在の政策を是とする人を政策委員に次々任命し、異論を排除する政府も問題です。

『嫌われる勇気』という本がベストセラーになっているようですが、「組織に反省を求める」ためには、その上の「恨まれる勇気」が必要だと痛感した次第です。この先には、「孤立する勇気」を覚悟するようでしょう。

 最後に大学の先輩からのアドバイス。
『正しいことを言う時は、少し控えめにするほうがいい。正しいことを言う時は相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい。』 心しましょう。

(平成29年7月31日  土屋 治)