株・債券・不動産等の資産価格が、ここ数年来、騰(あ)がってきております。この主な原因は金利が低いことにあるというのは衆目の一致するところです。
 現在、銀行の住宅ローンの貸付金利は1.2%~2%くらいです。これらの基本となる国債10年ものの金利は0.4%を切る位になっております。アパート投資を念頭に考えますと、仮に金利が1%から2%に上昇したとしたら、単純計算で投資用不動産価格は半分になってもおかしくないと思われます。(詳しい説明は省きます。)

 以上は教科書的な説明ですが、では、これから金利が騰がるのでしょうか。

 現在、長期の名目金利が著しく低いのは、マイナス金利を導入した上に、日銀が国債を年間発行額の 8割以上という爆買いをしているからです。また7月上旬には国債指値オペ(日銀が利回りを定めて国債を無制限に買い入れること)までして金利を下げております。また株式市場に対しても日銀がETF及びREIT(リート:不動産投信)を大量に買っており、株価の下支えとともに市中にお金を流し、日銀が最大の株主になっているという異常な状態です。
 株価水準を高く保つことは、円安及び低金利維持とともに安倍内閣の至上命題であり、これらの行動(異次元の量的緩和)の持続可能性が数年前から論じられておりますが、“政府にもの申せぬ状態になっている(木内登英元日銀審議委員)” 日銀が、自ら方針変更する可能性はありません。国債も際限まで買い続けるものと思われます。既に異次元緩和からの出口はありません(日銀黒田総裁は、「出口を語るのは時期早尚」と言っております。)ので、凪の状態が続くと仮定すれば、あと5年間は低金利のままでしょう。

 私見では、凪の状態は長く続かず、金利上昇に備えておいた方がいいと思います。数日前の朝日新聞に日銀がREITを大量に買っており、それが危ないのではないかと書いてありました。資金の運用に困っている地方銀行が、日銀と横並びで、おっかなびっくり買っているそうです。地銀は春にも米国債投資で損失を出したばかりですし、マイナス金利等で、来期には減収減益となるところが多く出そうです。一般企業も含めてこれらゲームプレイヤーが一社でも躓くと往年のタテホ・ショック(※)のようなことが起こりかねません。要注意です。

 蛇足ですが、先週の週刊現代に「タワーマンション・中国人が投げ売り」という記事が出ておりました。お台場-豊洲・有明に数年前に出来たタワーマンションに売り物が殺到しているとの記事でした。値上がりして、利が乗っているのでオリンピック前に売ってしまいたいということらしいです。渦中の日本人には判りませんが、岡目八目で、外国人には感じるところがあるのかもしれません。

(平成29年9月1日   土屋 治)

※タテホ・ショックは、1987年9月にタテホ化学工業の国債先物取引の失敗による巨額損失の発覚に伴い発生した、日本の債券相場の暴落 (金利の暴騰)などをいいます。
 当時、鉄鋼向け炉材用の電融マグネシアのトップメーカーであった タテホ化学工業は、財テク企業としても有名でしたが、1987年6月以降の債券相場の下落で債券投資(債券先物取引)に失敗し、その年の9月に286億円に上る巨額損失を出したことが明るみに出て、国内外の株式相場や債券相場が一斉に急落を演じ、これが「タテホ・ショック」と呼ばれるものです(同社は一気に債務超過に陥る)。
 特に債券市場は、財テク自粛ムードの拡大により、企業の投資資金が国債市場から引き揚げるとの不安心理が高まってパニックに陥り、次々に投げ売りが始まった結果、国債価格は暴落し、その年の5月に2%台だった金利が10月には6%台と4%も上昇しました。
(出典/金融情報サイト「iFinance」金融経済用語集より(タテホショック:意味・解説)を引用しています。)