都心の土地・建物・マンションは、僅かながら値上がりが続いているようです。
問題はこの値上がりがいつまで続くかです。先月半ば、所用で六本木に行きましたら、近くの分譲高層マンションの価格が坪当たり1000万円ということでした。(専有面積20坪のマンションが2億円!)時間を置かず完売したそうです。これはもう骨董価格です。
建物の建築確認申請は順調に増えているそうです。不動産業と関わりの深い建築業は、人手不足を乗り越え全般に景気がいいようです。
当社にも買い取り業者がいろいろと回って参ります。マンションのデベロッパー・建売業者・買い取り転売業者・またゼロ金利の影響か、相続対策用か、最近は収益物件の一棟売りを探している会社も増えました。
池袋1・2・3丁目は、以前の建売業者の土地仕入れ価格は坪200万円前後でしたが、最近では、250万円近い価格で買い入れた例がありました。都心はもとより池袋も多少バブルになっていると思います。都心のビル売買では利回りが3%を割るものも出てきました。これは将来の値上がり益を期待しての価格です。
しかし、練馬区などすこし郊外に行くと、建売の販売は苦戦しているようです。(地方はもっと!)
同年代の業者仲間と話しましたが、今の都内(都心5区)の土地価格はそろそろ限界ではないかと意見が一致しました。我々は25年前バブル崩壊・5年から10年に渡る地価下落を経験しましたが、今の若い不動産業者(若いと言っても40代・50代前半)は、株下落・バブル崩壊を身を以って経験していません。怖いもの知らずですし、おまけに日銀の異次元緩和・マイナス金利で銀行が貸し出し競争をしております。(我々年配の業者は高所恐怖症に陥っております。)
ちなみに実際には都内の地価が下がる兆候はまだ見られません。不動産が下がる時は、自然に売り物が増えてきて、物件が手に入りやすくなります。また指し値が通り易くなります(売主が値引きに応じてくれる)。現在はまだまだ売り物が少なく、売主も強気です。
また当然のことながら、不動産価格と株価(日経平均)とは時期はズレますが連動します。以前のバブル崩壊の時は、地価は株価が高値を付けた後下落を始めてから約2年後に下げ始めました。当時は、「株はバブルだが土地はバブルではない、実需だ」という言説が大新聞にまことしやかに載ったのを覚えております。株価の直近の高値は2015年8月の日経平均21,000円ですが、(現在16,500円前後)15,000円を割ってきませんと、本格的な下げはないでしょう。
しかし、地方・郊外は過疎及び老齢化により限界集落・限界団地が増えており、下げ止まりません。いいところと悪いところの差が大きくなっておりますので、単純な類推はできません。
また別の問題として、賃貸アパート・マンションの空室率が増えております。豊島区ではそれほど目立ちませんが、特に神奈川県・埼玉県等は顕著に上がっております。これは明らかに造りすぎです。郊外ではアパートメーカーが「30年保証」等と銘打って、50坪以上の空き地があれば人海戦術でセールスをかけています。「30年保証」というのが要注意で、実際は当初設定した賃料を30年間保証するのではなく、2年毎の見直しがあります。ここでメーカーと合意が得られないと、最終的には保証契約の解約ということになります。アパートは新築後2、3年は周囲の相場より1割程度高く貸せるものですので、メーカーはこの賃料で30年の保証・返済計画を作ってきます。これは一種の詐欺に近いものと言えます。また、建築費もセールスマン費用・保証料も入っていますので割高です。賃貸住宅建設を考えておられる方は、慎重な考慮が必要かと思われます。
( 平成28年8月3日 土屋 治 )